PART 6Chapter 15 · 投資の税金を味方につける

投資課税の基本

このセクションでは、投資の税金を味方につけるの重要ポイントを実例とクイズで整理します。

読了目安
10
見出し
6
学習目標
3
このセクションで学べること
  • 1譲渡益課税・配当課税の税率と仕組みを正しく理解する
  • 2特定口座と一般口座の違いを説明し、適切な口座を選択できる
  • 3損益通算と繰越控除の仕組みを活用して節税できる

投資で利益を得たら、税金はどうなる?

株式投資で利益を得ると、その利益には税金がかかります。「せっかく利益が出たのに税金で持っていかれるのか」と思うかもしれませんが、税金の仕組みを正しく理解すれば、合法的に税負担を軽くする方法がたくさんあります。このセクションでは、投資にかかる税金の基本ルールを体系的に学び、後のセクションで解説するNISAやiDeCoといった節税制度を理解するための土台を築きましょう。

譲渡益課税(キャピタルゲイン課税)の仕組み

用語解説
譲渡益課税(キャピタルゲイン課税)
株式や投資信託を売却して得た利益(譲渡益 = 売却価格 − 取得価格 − 手数料)に対して課される税金のことです。日本では所得税15.315%と住民税5%を合わせた合計20.315%の税率が適用されます(2037年まで復興特別所得税0.315%を含む)。

譲渡益課税は「申告分離課税」という方式で計算されます。これは、給与所得や事業所得などの他の所得とは分けて税額を計算するという意味です。つまり、株で大きな利益を出しても、それによって給与にかかる税率が上がることはありません。逆に言えば、株の損失を給与所得から差し引くこともできません(他の株式等との損益通算は可能です)。

譲渡益にかかる税額の計算
税額 = (売却価格 − 取得価格 − 売買手数料)× 20.315%
具体例
ある銘柄を50万円で購入し、手数料500円を支払いました。その後、株価が上がり80万円で売却(売却手数料500円)しました。
譲渡益 = 80万円 − 50万円 − 500円 − 500円 = 299,000円です。税額 = 299,000円 × 20.315% = 約60,742円となります。手取りの利益は約238,258円です。利益の約2割が税金として徴収されることを覚えておきましょう。

配当課税の仕組み

用語解説
配当課税
企業が株主に支払う配当金に対して課される税金です。上場株式の配当には、譲渡益と同じく20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)の税率が適用されます。通常は証券会社が源泉徴収を行うため、受け取り時にはすでに税金が差し引かれています。

配当課税には2つの申告方法があります。1つは「申告不要制度」で、源泉徴収されたまま確定申告しない方法です。もう1つは「申告分離課税」または「総合課税」として確定申告する方法です。総合課税を選ぶと、課税所得が330万円以下の場合は配当控除により実質税率が下がるメリットがあります。ただし、合計所得が上がると国民健康保険料などに影響する点には注意が必要です。

特定口座 vs 一般口座

用語解説
特定口座
証券会社が年間の売買損益を計算し、「年間取引報告書」を作成してくれる口座のことです。「源泉徴収あり」を選べば確定申告も原則不要になります。投資初心者には最も手軽な選択肢です。
特定口座(源泉徴収あり)
  • 証券会社が損益計算を自動で行う
  • 源泉徴収されるので確定申告が原則不要
  • 年間取引報告書が自動作成される
  • 売却のたびに税金が天引きされる(即時課税)
  • 初心者におすすめの選択肢
一般口座
  • 自分で損益計算をする必要がある
  • 年間の売買利益が20万円を超えたら確定申告が必須
  • 取引報告書は自分で作成する
  • 確定申告時にまとめて納税する
  • 管理の手間が大きいため上級者向け

初心者の方は迷わず「特定口座(源泉徴収あり)」を選びましょう。証券会社が税金の計算と納付をすべて代行してくれるため、確定申告の手間がかかりません。ただし、後述する損益通算や繰越控除を活用したい場合は、特定口座でも確定申告が必要になるケースがあります。

確定申告が必要になるケース

確定申告した方がよい主なケース
  • 複数の証券会社の口座間で損益通算したい場合
  • 年間の売買損失を翌年以降に繰り越したい場合(繰越控除)
  • 配当を総合課税で申告して配当控除を受けたい場合
  • 一般口座で年間の売買利益が20万円を超えた場合(給与所得者)
  • 外国株の配当で二重課税の還付を受けたい場合(外国税額控除)

損益通算と繰越控除

用語解説
損益通算(そんえきつうさん)
同じ年の中で、株式や投資信託の売却益と売却損を相殺(プラスとマイナスを合算)する仕組みです。また、上場株式の売却損は配当所得とも相殺できます。確定申告が必要ですが、結果として支払う税金を減らすことができます。
具体例
2025年にA株で50万円の利益、B株で30万円の損失が出ました。損益通算を行う場合と行わない場合を比較します。
損益通算しない場合、A株の利益50万円に対して50万 × 20.315% = 約101,575円の税金がかかります。損益通算すると、課税対象は50万 − 30万 = 20万円に減り、税金は20万 × 20.315% = 約40,630円になります。約6万円の節税効果があります。
用語解説
繰越控除(くりこしこうじょ)
損益通算してもなお残った売却損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺できる制度です。毎年確定申告を行うことが条件です(利益がゼロの年でも申告が必要)。

繰越控除は非常に強力な節税手段です。たとえば今年100万円の損失が出て、翌年50万円の利益、翌々年60万円の利益が出た場合、翌年は繰越損失で利益が相殺されて税金ゼロ、翌々年は残りの繰越損失50万円と相殺して課税対象は10万円だけになります。ただし、必ず毎年確定申告を行わないとこの権利を失うので注意しましょう。

理解度チェック
日本の上場株式の譲渡益(売却益)にかかる税率として正しいものはどれですか?
理解度チェック
今年、A株で80万円の利益とB株で50万円の損失が出ました。損益通算を行った場合の課税対象額と節税額はどれですか?
理解度チェック
投資初心者が証券口座を開設する際、最も適した口座の種類はどれですか?