PART 3Chapter 6 · ローソク足 — 値動きの最小単位を読む

複数足のパターン認識

このセクションでは、ローソク足 — 値動きの最小単位を読むの重要ポイントを実例とクイズで整理します。

読了目安
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見出し
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学習目標
3
このセクションで学べること
  • 1包み足・はらみ足の構造と、トレンド転換シグナルとしての意味を理解する
  • 2赤三兵・黒三兵のパターンからトレンドの確信度を判断できる
  • 3窓(ギャップ)の4種類を区別し、それぞれの相場における意味を説明できる

2本以上のローソク足を組み合わせて読む

1本のローソク足からも多くの情報を読み取れますが、2本以上を組み合わせることで、さらに精度の高いシグナルを得ることができます。これを「複数足パターン」と呼びます。複数足パターンは、前のローソク足と次のローソク足の「関係性」に着目します。包み足、はらみ足、三兵、窓(ギャップ)など、古くから日本のテクニカル分析で使われてきたパターンを一つずつ見ていきましょう。

包み足(つつみあし)— 前の足を飲み込む反転シグナル

用語解説
包み足(Engulfing Pattern)
2本のローソク足からなるパターンで、2本目の実体が1本目の実体を完全に包み込む(覆い尽くす)形です。1本目と2本目の色が異なることが条件です。トレンドの転換を示す強力なシグナルとされます。

包み足には「陽の包み足」と「陰の包み足」の2種類があります。

パターン構成出現する場面示唆するシグナル
陽の包み足(Bullish Engulfing)1本目: 小さな陰線 → 2本目: 1本目を包む大きな陽線下落トレンドの安値圏底打ち・上昇転換のシグナル
陰の包み足(Bearish Engulfing)1本目: 小さな陽線 → 2本目: 1本目を包む大きな陰線上昇トレンドの高値圏天井・下落転換のシグナル

なぜ包み足が強い転換シグナルなのでしょうか? 陽の包み足を例に考えてみます。1本目の小さな陰線は「売り手がやや優勢だった日」を示しています。しかし翌日(2本目)、その陰線の値幅を完全に上回る大陽線が出現したということは、「前日の売り手を圧倒する買い手が一気に参入した」ことを意味します。この力関係の劇的な逆転が、トレンド転換の根拠となるのです。

具体例
下落トレンドが2週間続いた後、1日目に始値600円→終値590円の小さな陰線が出ました。2日目は始値585円→終値615円の大陽線で、1日目の実体(600円〜590円)を完全に包み込みました。
これは典型的な「陽の包み足」です。1日目の売り手の成果(10円の下落)を、2日目の買い手が軽々と覆し、さらに大幅に上回っています。下落トレンド中にこのパターンが出現したことで、売り手から買い手への主導権の移行が起きた可能性が高いと判断できます。特に2本目の出来高が多い場合は、より信頼性の高いシグナルです。

はらみ足(インサイドバー)— 嵐の前の静けさ

用語解説
はらみ足(Harami / Inside Bar)
2本のローソク足からなるパターンで、2本目の実体が1本目の実体の内側に完全に収まる形です。包み足とは逆の関係にあります。値動きが収縮し、次の大きな動きの「前兆」となることが多いパターンです。

はらみ足は「母親のお腹の中に赤ちゃんがいる」イメージから名付けられました。1本目の大きなローソク足が「母体」、2本目の小さなローソク足が「赤ちゃん」です。値動きが小さくなる(=ボラティリティが収縮する)ことを表しており、エネルギーが溜まっている状態とも言えます。

はらみ足は包み足ほど明確な「方向」を示すものではありません。むしろ「変化が近い」ことを示すシグナルです。上昇トレンド中に大きな陽線の後にはらみ足が出たら、「買い手の勢いが一旦止まった」ことを意味し、トレンドの一服や反転の可能性を示唆します。下落トレンドの場合はその逆です。

具体例
急上昇が続いた後、1日目に始値1,200円→終値1,300円の大陽線が出ました。2日目は始値1,280円→終値1,260円の小さな陰線で、1日目の実体の範囲内に収まりました。
これは上昇トレンド中のはらみ足です。1日目は100円幅の大陽線で勢いがありましたが、2日目は20円幅の小陰線にとどまり、値動きが大幅に縮小しています。これは「買い手の勢いが急に弱まった」ことを示しています。この後、3日目以降にどちらの方向にブレイクするかがポイントです。3日目に1日目の高値を超えれば上昇継続、1日目の安値を割れば反転下落と判断されることが多いです。
包み足とはらみ足の違い
  • 包み足: 2本目が1本目を「飲み込む」→ 力関係の逆転 → トレンド転換シグナル
  • はらみ足: 2本目が1本目の中に「収まる」→ エネルギーの蓄積 → 次の大きな動きの前兆
  • 包み足はトレンドの「終わり」、はらみ足はブレイクアウトの「準備」を示唆する
  • どちらも出現する位置(高値圏か安値圏か)が重要で、トレンドの途中では信頼性が下がる

三兵(さんぺい)— 3本の足が示すトレンドの確信

用語解説
赤三兵(あかさんぺい / Three White Soldiers)
3本連続で陽線が出現し、それぞれの終値が前日の終値を上回るパターンです。各ローソク足の実体がそこそこの大きさを持ち、上ヒゲが短いことが理想的な形です。強い上昇トレンドの始まりを示唆します。
用語解説
黒三兵(くろさんぺい / Three Black Crows)
3本連続で陰線が出現し、それぞれの終値が前日の終値を下回るパターンです。赤三兵の逆で、強い下落トレンドの始まりを示唆します。「三羽烏(さんばがらす)」とも呼ばれます。

「2本連続」なら偶然かもしれませんが、「3本連続」となると偶然では片付けにくくなります。赤三兵は3日連続で買い手が勝ち続けたことを意味し、市場に明確な「上昇の合意」が形成されつつあることを示します。特に底値圏からの赤三兵は、相場が本格的に反転する強力なシグナルとして知られています。

ただし、注意点もあります。3本目のローソク足の実体が極端に小さくなっていたり、上ヒゲが長くなっている場合は、勢いが衰え始めている証拠です。このような赤三兵は「三兵の行き詰まり」と呼ばれ、上昇が続かない可能性を示唆します。3本すべてがしっかりとした実体を持ち、ヒゲが短いのが理想的な三兵です。

条件赤三兵黒三兵
ローソク足の色3本とも陽線3本とも陰線
終値の推移1本目 < 2本目 < 3本目の終値1本目 > 2本目 > 3本目の終値
始値の位置各足の始値が前の足の実体内にある各足の始値が前の足の実体内にある
実体の大きさ3本とも適度な大きさ3本とも適度な大きさ
ヒゲ上ヒゲが短いほど理想的下ヒゲが短いほど理想的
信頼性が高い場面安値圏・底値圏からの出現高値圏・天井圏からの出現
具体例
ある銘柄がレンジ相場(横ばい)を3ヶ月続けた後、1日目: 始値700円→終値720円、2日目: 始値715円→終値740円、3日目: 始値735円→終値760円、と3日連続で陽線が出現しました。
これは赤三兵のパターンです。3日間で60円(約8.6%)上昇し、各日の終値が前日を確実に上回っています。また各日の始値が前日の実体範囲内から始まっている点も理想的です。長いレンジ相場の後の赤三兵は「ようやく方向が決まった」というシグナルで、上昇トレンドの起点になることがあります。出来高の増加を伴っていればさらに信頼性が高まります。

窓(ギャップ)とその意味

用語解説
窓(まど / Gap)
前のローソク足と次のローソク足の間に価格の空白(重なりのない部分)ができることです。前日の高値より当日の安値が高い場合を「上方の窓(ギャップアップ)」、前日の安値より当日の高値が低い場合を「下方の窓(ギャップダウン)」と呼びます。

窓ができるのは、取引時間外(夜間や休日)に株価に大きな影響を与える出来事があった場合です。たとえば、引け後に好決算が発表されると、翌朝の寄り付きで前日の終値よりはるかに高い価格から取引が始まることがあります。この「飛び」が窓です。

相場の格言に「窓は埋める」というものがあります。窓が開いた後、いずれ株価がその空白部分を埋める(=窓の価格帯まで戻ってくる)傾向があるとされています。ただし、これはあくまで「傾向」であり、強いトレンド中の窓はなかなか埋まらないこともあります。

窓の種類出現する場面意味と特徴
ブレイクアウェイギャップ(突破の窓)レンジ相場から抜け出すとき新しいトレンドの始まり。なかなか埋まらないことが多い
ランナウェイギャップ(逃げの窓)トレンドの途中トレンドの加速を示す。勢いが強い証拠
エグゾーストションギャップ(消耗の窓)トレンドの終盤最後の力を振り絞った窓。すぐに埋まることが多く、反転のサイン
コモンギャップ(普通の窓)レンジ相場の中特に意味のない窓。短期間で埋められることが多い

2つの高値をつけた後に下落に転じるパターン。ネックラインを割ると売りシグナル。

図6.2: 複数足パターンの実例 — 包み足・はらみ足・三兵・窓が実際のチャートでどのように現れるか

上のチャートで複数足パターンが実際の値動きの中でどう現れるかを確認しましょう。重要なのは、パターンを「暗記」するだけでなく、その背後にある市場参加者の心理を理解することです。包み足は「力関係の逆転」、はらみ足は「エネルギーの蓄積」、三兵は「方向の合意形成」、窓は「一夜にして変わった評価」を表しています。

具体例
ある銘柄の終値が前日1,000円でした。翌朝、決算発表の好材料を受けて始値1,050円からスタートし(前日高値は1,010円)、終値1,080円で引けました。
前日高値1,010円と当日安値1,050円の間に40円の「上方の窓」が開いています。決算というファンダメンタルズの変化が原因なので、この窓は「ブレイクアウェイギャップ」に分類される可能性があります。企業の評価が一段階引き上げられた結果であり、この窓はすぐには埋まらない(=1,010円まで下がらない)可能性が高いです。ただし、決算の内容が市場の期待に対して微妙だった場合は、数日で窓を埋める展開もあり得ます。
このセクションのまとめ
  • 包み足: 2本目が1本目を飲み込む → トレンド転換の強力なシグナル
  • はらみ足: 2本目が1本目の中に収まる → 次の大きな動きの前兆
  • 赤三兵: 陽線3連続 → 強い上昇トレンドの始まり。黒三兵はその逆
  • 窓(ギャップ): ローソク足間の価格の空白 → 大きな変化の証拠。種類により意味が異なる
  • パターンは「形の暗記」ではなく「心理の理解」が大切 — 出現する位置と出来高も合わせて判断する
理解度チェック
下落トレンドの安値圏で、1本目に小さな陰線、2本目にその陰線を完全に包み込む大きな陽線が出現しました。このパターンの名前と示唆するシグナルは?
理解度チェック
上昇トレンドの途中で、1日目に大きな陽線が出た後、2日目に小さな陰線が1日目の実体の中に収まる形が出現しました。このパターンの名前と意味は?
理解度チェック
ある銘柄の終値が前日1,500円でしたが、翌朝1,560円で始まり(前日高値は1,520円)、その後1,580円で引けました。この状況で「窓」は開いていますか?開いている場合、窓の大きさはいくらですか?