PART 3Chapter 8 · オシレーター系指標 — 過熱感を測る

ストキャスティクス

このセクションでは、オシレーター系指標 — 過熱感を測るの重要ポイントを実例とクイズで整理します。

読了目安
10
見出し
5
学習目標
3
このセクションで学べること
  • 1%Kと%Dの計算原理(レンジ内での現在価格の位置)を理解する
  • 280/20の過熱ゾーン内でのクロスを売買シグナルとして活用できる
  • 3ファスト・ストキャスティクスとスロー・ストキャスティクスの違いと使い分けを把握する

「今の株価はレンジのどこにいるか」を測る

RSIが「上昇と下落の比率」、MACDが「移動平均の差」に着目したのに対し、ストキャスティクス(Stochastics)は「一定期間の値幅の中で、現在の株価がどの位置にいるか」という、また別の角度から相場の過熱感を測る指標です。1950年代にジョージ・レーンが考案した歴史ある指標で、特にレンジ(横ばい)相場での逆張り売買で威力を発揮します。

ストキャスティクスとは — レンジ内の位置を測る

用語解説
ストキャスティクス(Stochastics)
一定期間における最高値と最安値の値幅(レンジ)を100%としたとき、現在の終値がそのレンジのどの位置にあるかを0〜100%で表す指標です。レンジの上限に近ければ「買われすぎ」、下限に近ければ「売られすぎ」と判断します。

ストキャスティクスの基本的な発想は、「上昇トレンドでは終値がレンジの上限付近に集まりやすく、下落トレンドでは終値がレンジの下限付近に集まりやすい」という経験則に基づいています。この性質を利用して、トレンドの転換点を見極めようとするわけです。

ストキャスティクスはRSIと同様にオシレーター系指標ですが、計算の基礎が異なります。RSIは上昇幅・下落幅の「方向性」を見るのに対し、ストキャスティクスは価格の「レンジ内での位置」を見ます。両者を組み合わせることで、より多角的な分析が可能になります。

%Kと%Dの計算

ストキャスティクスは「%K」と「%D」という2本のラインで構成されます。%Kが速い線、%Dが遅い線です。一般的に期間は14日が標準です。

%K(ファストライン)
%K = (当日終値 − 過去n日間の最安値) ÷ (過去n日間の最高値 − 過去n日間の最安値) × 100
%D(スローライン)
%D = %Kの3日間移動平均
具体例
過去14日間の最高値が1,200円、最安値が1,000円、当日の終値が1,150円だった場合。
%K = (1,150 − 1,000) ÷ (1,200 − 1,000) × 100 = 150 ÷ 200 × 100 = 75%。これは、過去14日間のレンジの75%の位置に現在の株価があることを意味します。レンジの上方にいるため、やや買われすぎの傾向があると言えます。

%Kは値動きに敏感に反応するため、ギザギザした動きになりやすいです。%Dはその平滑化版なので、より滑らかな動きになります。RSIと同様に、一般的に80以上が「買われすぎ」、20以下が「売られすぎ」のゾーンとされます(70/30を使う場合もあります)。

売買シグナルの読み方

ストキャスティクスの売買シグナルは、RSIのゾーン判定とMACDのクロス判定を組み合わせたような使い方ができます。実際のチャートを見てみましょう。

%K%D80(買われすぎ)20(売られすぎ)
図8.3: ストキャスティクスの%Kと%Dの推移 — クロスと過熱ゾーンに注目
シグナル条件意味
買いシグナル20以下の売られすぎゾーンで%Kが%Dを下から上に抜ける売られすぎからの反発開始を示唆
売りシグナル80以上の買われすぎゾーンで%Kが%Dを上から下に抜ける買われすぎからの反落開始を示唆
強気のダイバージェンス株価が安値を更新するが、ストキャスティクスが安値を切り上げる下落の勢い減衰。底打ちの可能性
弱気のダイバージェンス株価が高値を更新するが、ストキャスティクスが高値を切り下げる上昇の勢い減衰。天井の可能性

重要なポイントは、クロスが「過熱ゾーン内」で発生することです。中立ゾーン(20〜80の間)でのクロスは信頼性が低く、ダマシとなりやすいため注意が必要です。また、RSIと同様にダイバージェンスも有効なシグナルとして活用できます。

ファスト vs スロー・ストキャスティクス

ストキャスティクスには「ファスト・ストキャスティクス」と「スロー・ストキャスティクス」の2つのバリエーションがあります。実際のトレードでは、多くの場合スロー・ストキャスティクスが使われます。

項目ファスト・ストキャスティクススロー・ストキャスティクス
速いライン%K(生の値)Slow %K = ファストの%D(%Kの3日移動平均)
遅いライン%D(%Kの3日移動平均)Slow %D = Slow %Kの3日移動平均
感度高い(素早く反応)低い(滑らかに反応)
ダマシの頻度多い少ない
主な用途超短期トレード一般的なスイングトレード〜中期投資

スロー・ストキャスティクスは、ファスト・ストキャスティクスの%Dを「速いライン」として使い、それをさらに平滑化したものを「遅いライン」として使います。つまり、二重に平滑化することでノイズを減らし、より信頼性の高いシグナルを出すようにしたものです。

初心者の方には、まずスロー・ストキャスティクスから使い始めることをおすすめします。ファスト・ストキャスティクスはシグナルが頻出してタイミングを計るのが難しく、経験が必要です。多くの証券会社のチャートツールでも、デフォルトはスロー・ストキャスティクスに設定されています。

ストキャスティクスのポイントまとめ
  • ストキャスティクスは一定期間の値幅の中で現在価格の「位置」を0〜100%で表す
  • %K(速い線)と%D(遅い線)の2本で構成。標準期間は14日
  • 80以上が買われすぎ、20以下が売られすぎ。過熱ゾーン内のクロスが売買シグナル
  • 実践ではスロー・ストキャスティクス(二重平滑化)が主流
  • レンジ相場に強いが、強いトレンド相場では過熱ゾーンに張り付くため注意
理解度チェック
ストキャスティクスの%Kが20%以下のゾーンで%Dを下から上に抜けた場合、一般的にどのように解釈しますか?
理解度チェック
ストキャスティクスの%Kと%Dが50付近でクロスしました。この場合の解釈として最も適切なのはどれですか?
理解度チェック
実践で「スロー・ストキャスティクス」がファスト版より多く使われる理由は何ですか?